ゲヒルンコンサルティング株式会社 | 【最新情報編】2025年版 タイ税制のトレンドと改正ポイント

【最新情報編】2025年版 タイ税制のトレンドと改正ポイント

2025年08月16日

カテゴリー 税務
タグ VAT 源泉税

タイ税務の「次」を読む
:電子インボイス義務化・日タイ租税条約・プラットフォーム課税・VAT率の行方

電子インボイス・e-Receipt義務化の最新動向

現時点(2025年8月)で、タイの電子インボイス(e-Tax Invoice)/ e-Receipt は 「全面義務化は未実施」です。政府はRTIR(リアルタイム報告)型の e-Tax Invoice & e-Receipt システムを提供し、ETDA(電子取引開発機構)経由の 「e-Tax by Email」も利用可能ですが、導入は原則任意のまま。 ただし、導入促進のための優遇(投資額の追加損金算入や e-Withholding利用時の源泉税1%軽減など)が2025年末まで延長されています。

  • 公式ポータル:etax.rd.go.th で事業者登録・文書送信。APIで導入事業者のステータス確認も可能。
  • RTIRでは、発行後にXML形式で月次報告(翌税月15日まで)が求められます(小規模はEmail方式も可)。
  • 個人向け消費喚起策「Easy e-Receipt 2.0」は2025/1/16–2/28の間、最大5万バーツの所得控除対象に。

▶︎ 示唆:義務化が告示されてから本番稼働までの猶予は短期化する傾向。 監査対応・ERP連携・タイムスタンプ/署名運用・10年保管ポリシーを 今のうちに整備し、優遇が効いている2025年内に移行コストを圧縮するのが実務的です。

租税条約(日タイ間)の活用と源泉税率の確認

日タイ租税条約(1990年、MLI適用)は、支払源泉地での課税上限を規定します。 主な規定(日本⇄タイ間の支払に関する上限)と、タイ国内法の標準源泉率を並記します。 実務は「国内法と条約の有利選択」かつ受益者主義フォーム提出前提で判断してください。

支払区分 条約上限(タイ⇨日本 居住者へ) タイ国内法の標準源泉 実務ポイント
配当 受益者が6か月以上25%以上保有の会社
工業事業会社配当:15%
・その他:20%
(それ以外の持株要件では条約上限の明確な軽減なし)
一律10%(タイ国内法) 国内法10%が条約上限(15/20%)より低いため、通常は10%適用が有利。
利子 銀行/保険等の金融機関宛:10%
・その他:25%
原則15%(対象により異動あり) 支払先が金融機関なら条約で10%へ軽減可(受益者証明・条約届出が前提)。
ロイヤルティ 上限15%(著作権・工業所有権等を包含) 原則15% 多くのケースで15%据置。PE帰属なら事業利益課税へ。

さらに、日本側は外税控除や、一定のタイ投資優遇に対する みなし外国税額控除(上限25%)の特例が条約に規定されています (適用期間・条件あり)。

▶︎ 実務Tip:条約軽減の適用には、受益者要件と所定フォーム提出(日本側は「租税条約に関する届出書」等、タイ側は証明類)が必要。 書類不備時は国内法の源泉率で控除され、後日の還付申請が必要になります。

デジタル経済に対応した新しい課税ルール(プラットフォーム課税など)

① 海外デジタルサービスへのVAT(SVE)

2021年9月以降、非居住の電子サービス事業者/プラットフォームで タイの非VAT登録顧客向け売上が年1.8百万THBを超える場合、 タイで簡易登録申告納付(仕入税額控除なし)が必要です。

② 電子プラットフォームの「売上データ報告」義務

2024年1月1日から、電子プラットフォーム事業者は出店事業者の売上データを 収集・年次報告する義務が導入(一定規模以上に適用、監督当局の所管除外もあり)。 これは所得捕捉・適正課税に向けた重要な情報レポーティングです。

③ DPS法(Digital Platform Services Law)による規制面の整備

ETDA所管のDPS法(2023年8月施行)は、国内外のプラットフォームに事前届出透明性確保年次レポート等を義務付け、 2025年7月には高リスク市場向けの追加義務に関する指針も明確化。 税務そのものではないものの、税務レポーティングと密接に連動します。

▶︎ 示唆:マーケットプレイス運営・跨境SaaS・アプリ配信は、 VAT(SVE)適格判定・インボイス発行要件・売上情報報告の三点を ガバナンスに組み込み、契約条項(税務表明保証/総額条項)と データ保持(売上・手数料・出店者情報)の整合を取ることが肝要です。

将来的に検討されているVAT率引き上げの可能性

タイの標準VATは法定10%ですが、7%(地方税込)への暫定引下げが 2024年9月の政令(Royal Decree No. 790)で2025年9月30日まで延長済み。 通例どおりなら、2025年10月1日以降10%へ復帰する枠組みで、 再延長の有無は直前に判断されるのが通例です。現時点で確定しているのは 「9月30日まで7%」のみであり、以降は政策判断待ちです。

  • 投資家視点:価格転嫁・需要弾力性・マージン感応度を7%/10%の両シナリオで再計測。
  • 経営実務:2025年Q3のうちにERP税コード・価格表・契約「税込/税抜」表記・自動課税ロジックを二段階で準備。
  • カットオーバー:インボイス日の税率で判定するため、またぎ請求・返品・前受金の扱いを手順化すること。

「今後の変化を先読みしたい経営者・投資家」向けアクションチェックリスト

  1. eインボイス即応:2025年内にRTIR対応をパイロット導入(優遇期間中)。署名基盤・保管10年・取引先同意の運用を確立。
  2. DTA設計:配当/利子/ロイヤルティの支払ルート受益者要件を検証。金融機関宛利子は10%まで軽減され得る点を資本政策・借入契約で活用。
  3. プラットフォーム統制:SVE(1.8百万THB閾値)と売上報告義務の両輪を体制に組込み、DPS法の届出・透明性要件を内部統制に接続。
  4. VATシナリオ:2025/10/1の10%復帰を前提に価格表・契約・見積テンプレートを二系統用意。延長決定のニュースは9月中旬〜下旬に出ることが多い点を念頭に。

※本稿は公開情報に基づく一般的解説であり、個別案件は必ず顧問税理士・弁護士とご確認ください。